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広島でのオバマ大統領のスピーチにはたくさんの日本人の心を動かしたでしょう。ハワイで大統領のスピーチをNHKの実況放送で聞きました。もちろん日本語の訳はありません。

翌日、大統領の日本語訳がどのようなものになっているのかが気になって調べてみました。翻訳の曖昧さにびっくりしました。大意は間違っていませんが、元英語教師として細かいことにこだわると時に眉を細める箇所があります。

同時通訳には相当な集中力と英語&日本語力が必要とされます。NHKを含めた民法放送の同時通訳も通訳者によってはひどいものがありました。フジテレビ(FNN)では「何千万人もの日本人、何千万の朝鮮人」が亡くなったと同時通訳しています。

オバマ大統領は就任以来、スピーチライターの専門家ベン・ローズ大統領副補佐官がスピーチの草稿を担当しています。オバマ大統領のノーベル平和賞受賞演説などの主要演説を担当している大統領のブレインの1人です。

大統領就任式には16代大統領エブラハム・リンカーンが使用したとされる聖書を掲げて演説したように、オバマ大統領は尊敬するリンカーン大統領を意識したスピーチをしています。ともに弁護士で、イリノイ州議員、上院議員から大統領になった2人には共通点が多いのです。

今回の広島でのスピーチも大統領就任時のように、奴隷解放をしたリンカーン大統領のスピーチを連想させます。1863年の国立戦没者墓地の奉献式におけるリンカーン大統領の有名なゲティスバーグの演説です。。「人民の、人民による、人民のための政治」と言うあのスピーチです。学生時代に英語教材で学んだ人も少なくないので、オバマ大統領のスピーチの出だしでリンカーンを思い出した人もいるでしょう。

Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky and the world was changed. A flash of light and a wall of fire destroyed a city and demonstrated that mankind possessed the means to destroy itself.


Why do we come to this place, to Hiroshima? We come to ponder a terrible force unleashed in a not-so-distant past. We come to mourn the dead, including over 100,000 Japanese men, women and children, thousands of Koreans, a dozen Americans held prisoner.

・・・  My own nation’s story began with simple words: All men are created equal,
(オバマ大統領広島のスピーチ)


Four score and seven years ago, our fathers brought forth on this continent, a new nation, conceived in Liberty, and dedicated to the proposition that all men are created equal.


Now we are engaged in a great civil war, testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure. We are met on a great battle-field of that war. We have come to dedicate a portion of that field, as a final resting place for those who here gave their lives that the nation might live. It is altogether fitting and proper that we should do this.

 ・・・ That goverment of the people, by the peple, for the people, shall not  perish from the earth.
(リンカーン大統領ゲティスバーグのスピーチ)

オバマ大統領のスピーチにはリンカーン大統領の似たようなフレーズや言い回しが見られます。もちろん、All men are created equal(人はみな平等である)と言う独立宣言のフレーズがリンカーン大統領のように引用されています。

同時通訳と日本語訳には中学生でもわかるような時制の誤訳があるものがあります。Why do we come to Hiroshima?, We come to が過去形で訳されています。誤訳の過去形だと、「オバマ大統領一行が~するためにやって来た」と誤解されます。現在形では「私達は(一般的な普遍的な主語)~するために広島にやってきます」となります。現在形には未来を含める意味合いもありますので、「これからも世界中から多くの人が広島にやってくるでしょう。」と言う意味を含んでいます。時制の違いを無視するのは間違いです。

スピーチの目的は容易な言葉を選んで、さまざまなレベルの人たちに訴えかけることです。オバマ大統領のスピーチもわかりやすい英語で、日本の高校英語のテキストにもできそうなレベルです。日本語訳にはやはり限界があります。一度英語のスピーチ原稿を見ながら、オバマ大統領のスピーチを英語で聞いてください。時に韻を含むスピーチには、日本語では伝わらないオバマ大統領の気持ちが伝わるはずです。

*将来の日本の高校英語の教科書にこのスピーチが採用されることは100%確実でしょう。



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