先週にビートルズのジョージ・ハリスンのウクレレを紹介しました。マウイ島といえば、誰もが大抵はラハイナを目指しますが、週末を利用してジョージの愛したハナ・ナヒクに行ってきました。マウイ島は、ハリウッドのセレブリティが別荘を構えるセレブの島でもあります。トークショウのオプラ・ウィンフリーもマウイ島ハナに広大な別荘地を持っています。
ジョージは生前、世界のリゾート地に別荘を持っていました。オーストラリア・ハミルトン島、セイシェル・マヘ島、マウイ島ハナなど。中でもマウイ島のハナはジョージのお気に入りだったようです。ジョージが住んでいた別荘があるハナのナヒクは、思ったとおりの別世界でした。こんな所に人が住んでいるのかと思わせるあるトロピカル・ジャングルの中、ここにはワイキキの喧騒もビーチも高層ホテルもありません。
ハナへの有名な30マイルに渡る曲がりくねった細い道は、これでもかとカーブが果てしなく続き、気が抜けません。ドライブ途中、強いスコールにも会い緊張したドライブが続きます。マウイ島の東海岸は雨が多く、トロピカルな植物が繁茂し、昔ながらの豊かな自然が手が付けられず保存されています。36号線をワイルア渓谷を過ぎて、本線を外れ車一台がやっと通れる小道を入っていきます。ハナの町自体大きくありませんが、ナヒクはほとんど人が住まないところです。
ナヒクの小道を入り少しすると、そこは音のない世界でした。カーラジオは、とっくの昔に電波が届かなくなっています。小道を被うように両側から迫るジャングルの木々。自然のトロピカル・フラワーが咲き乱れています。風の音、木々の葉が擦れる音、そして時々聞こえる小鳥のさえずり。それ以外の音が聞こえてきません。自分が声を発するのも、躊躇われる空間です。
さらに進んでいくと、こんな所に人が住むのかと思う所に、何軒かの民家があります。そしてさらに奥に行った63エーカーがジョージの別荘地です。63エーカーとは、一辺が1km四方以上の大きさです。トロピカルジャングルに隠れて、もちろん建物は見えません。静かな時は、まるで世界の時計が止まったかのような錯覚を覚えさせます。ジョージの魂に触れた瞬間でした。
ビートルズのメンバーの中でもとりわけ哲学的で、神を意識していたジョージ。「オール・シングス・マスト・パス」(All things must pass )」はまさに、仏教の「無常」を表しています。この世には常は無い、永遠な物は何も無い。すべて物はいずれ無くなってしまう。物質社会にうんざりして、心の安らぎを求めていたジョージ。
58歳と若くして亡くなったジョージの唯一の心残りは、このハナの何も無いナヒクのベッドの上で最期を迎えることができなかったことでしょう。いつの日か、ハナの夜空に浮かぶ月を見てジョージが作った「ヒア・カムズ・ザ・ムーン(Here Comes the Moon)」を聴きながら、天国のような美しいハナで月を見てみたいと思います。
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ジョージの最高傑作として評価の高い1979年のアルバム「ジョージ・ハリスン(慈愛の輝き)」があります。そのアルバムの何曲かが、このナヒクで産まれました。「ソフト・ハーテッド・ハナ(Soft-Hearted Hana)」のイントロには、ハナのレストランで録音された群衆のざわめきが入っています。空耳でしょうか?日本語の女性の「いらっしゃいませ、こんばんわ、どうもお疲れでした」が聞こえてきます。